相続の基礎知識(相続発生前のお手続き)
遺言書は書いたほうが良い?
遺言書は「特別に財産が多い」とか「家族の仲が悪い」場合に書くものだという考えの方がいますがそんなことはありません。「自分の財産をこのように分け合って欲しい」と残された人へのメッセージを書き記すことによって相続人同士の争い同士の争いを未然に防止し、円満な相続に役立てることができます。
遺言書の必要性が特に高いと思われるケース
下記のようなケースでは法律では相続人にならない人に財産を譲るため、また、争いになる可能性の高さから特に遺言書を書いた方が安心であると思われます。ただし遺言書の必要性はケースバイケースですので下記のケースに該当しなくても自分の遺産の行方についてご心配な方はご相談ください。
- 法定相続人以外の人(お世話になった人や内縁の妻など)に財産を譲りたい場合
- 子供がいない場合で配偶者にすべてを相続して欲しい場合
- 再婚していて現在の配偶者と前の配偶者の子供が相続人になる場合
- 先妻と後妻の両方に子供がいる場合
- 事業の後継者に事業に必要な財産を引き継いでほしい場合
- 相続人のなかに音信不通の方がいる場合
- 相続人が誰もいない
遺留分に注意
遺言を書く際に注意しておきたいのが遺留分です。
遺留分とは兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる相続財産の一定の取り分のことです。
遺留分の割合は民法で次のように定められています。
- 直系尊属のみが相続人の場合、相続財産の1/3
- それ以外の場合、相続財産の1/21.
この遺留分を無視して「遺産をすべて○○に譲る」という内容の遺言書を作成しても後に法定相続人との間で紛争になる可能性を残してしまいます。
ただし、相続人のうち誰かの遺留分を侵害したからといって直ちに無効な遺言とはなりません。遺留分という権利を遺言者の死後に相続人が行使するかどうかは相続人次第だからです。とはいえ遺言書を作成するにあたっては遺留分のことも念頭に置いて内容を考えるべきでしょう。
贈与税の非課税制度
生前贈与を活用すれば相続税の節税に役立ったり、生きているうちに財産を子や孫へ譲り渡したりできます。贈与税がかからずに生前贈与できる贈与税の特例をいくつかご紹介します。(平成30年12月現在の法令に基づく)
贈与税の配偶者控除
→婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与をするときに基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除できる制度
住宅取得資金の特例
→父母や祖父母など直系尊属から自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得、増改築等に必要な金銭の贈与を受けた場合、要件を満たすときは一定の非課税限度額まで贈与税が非課税になる制度
相続時精算課税の選択
→60歳以上の父母・祖父母から、20歳以上の子・孫に対し贈与をする場合に相続時精算課税選択の届出を税務署に出すことによって、2,500万円を限度に贈与税の特別控除を受けられるが、贈与した財産は贈与者に相続が発生した際に相続財産として課税さる制度
※いったん選択すると選択した年以後贈与者が亡くなる時まで継続して適用され、暦年課税に変更することができないので注意が必要
生命保険の活用
生命保険が相続税対策になるってご存知でしょうか?
死亡保険金は相続財産ではなく遺産分割協議などの相続手続きを経なくても受け取ることがでます。また 法定相続人の人数 × 500万円 を非課税で受け取ることができるので(それを超える分はみなし相続財産として課税対象になります)相続税を減らしつつ、すぐに受け取れるお金を遺すのに役立つ場合があります。面倒な相続手続きをせずともすぐに受け取れるので葬儀費用の支払いや相続税の納税資金の準備に充てられるので相続人も安心です。相続税対策だけでなく円満相続の豆知識として覚えておいて損はないでしょう。